歯周病の末路 | 札幌市清田区の動物病院 すぎうらペットクリニック

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歯周病の末路

普段から病院では身体検査とともに口腔内のチェックもしていますが、まず「家で口の中を見る」習慣がない方が多いですね。「嫌がるから」といった理由が多いのですが、その結果「何処かから変な匂いがする」ということで診察すると口の中がすごいことに・・・なんてことが多々あります。

中には病院の待合室にいても病院中がその子の口の中の匂いになってしまうくらいすごい口臭の子もいます。それでもずっとその子と同じ家にいるとご家族も気にならないのか、一緒に寝ていたりするようです。

歯周病の犬の歯の表面を拭って顕微鏡で見てみるとこんな感じです。

この画面の中の小さい粒々が全部細菌(ばいきん)です。写真ではわかりづらいですが、拡大してみるといろいろな種類の細菌が無数に確認できます。腸の中にはいろいろな細菌が住んでいてさしずめお花畑(フローラ)みたい・・・ということで「腸内フローラ」なんていったりしますが、ここまでくると口の中も完全にそんな感じです。

初期の歯周病は歯石がついている程度に見え、歯肉はきれいな状態です。理想はこの時に歯石をきちんととって歯肉を守ることですが、この段階で全身麻酔をしてきちんと歯石を取る機会はなかなかありません。「前の犬が歯で苦労したから」あるいは「家で全く触らせないから早めに綺麗にしておきたい」という子では1〜2年に一度全身麻酔下で処置をさせていただいていますが、10歳以上になっても綺麗な歯肉の状態を保つことができています。下の写真は13歳のUちゃんの口の中。

ご家族に「やっぱりそろそろやった方がいいかな」と思っていただけるのは、歯肉に赤みが出たり、歯肉が後退して一部で歯の根本が露出してきた頃でしょうか。その中でも比較的早いうちに処置ができれば、歯石の除去と歯肉縁の適切な処置である程度の回復が期待できます。しかしその時期を過ぎてしまうと歯の根あるは顎の骨にも影響が出てきてしまうため、抜歯をせざるを得ません。そのあたりの判断をするためには歯と顎のレントゲン写真を撮ってみるしかありません。犬や猫では歯のレントゲン検査自体に全身麻酔が必要なので、口腔内の処置と同時にすることがほとんどです。こういうレントゲン写真を見たことがあるのではないでしょうか?

これらの時期に適切な処置ができないと、「口を痛がっている」「腫れてきた」「匂いがひどいからなんとかしてほしい」ということになってしまいます。大抵は高齢になって、そのほかになんらかの疾患を持っていて麻酔のリスクが高く、まずは「全身麻酔で検査や処置ができる」状態かどうかでできることが大きく変わります。全身麻酔できる状態であればできるだけ早く口腔内の状態を改善するための処置を行います。この段階では多くの歯に抜歯が必要で、そのほかに顎の骨を削ったり、歯が抜けて開いてしまっている大きな穴を歯肉や周囲の組織を使って塞ぐという大掛かりな手術が必要になります。
下の写真は過去に上顎の歯を抜歯して、犬歯の根本に開いた大きな穴を塞いだKちゃんの現在の口の中。

残念ながら体の状態などからリスクが高くこうした処置を選択しない場合、お薬で痛みや細菌感染を軽減することができますが、歯周病そのものを治すことはできません。

これまでいろいろなすごい歯周病の子を見てきましたが、口腔内の細菌による全身の感染症や肺炎になってしまう子、ひどい口内炎で口を動かすといつも痛くて膿がよだれのように出てしまう子、動揺するようになった歯がぶつかり合ったり顎の骨が折れて口が閉じなくなってしまった子もいました。その前の段階でも全身麻酔をかけるのに躊躇した子がそうなってしまうと、してあげられることはあまり多くはありません。

前の日から口を閉じられないと来院したHちゃん。上顎の奥歯が傾いて下の奥歯とぶつかり顎を閉じられなくなってしまっていました。

下顎の骨が折れてしまったDちゃん。下顎は小型犬ではとても細くその割に大きな歯があるので(上のレントゲン写真を参照)、その歯が悪くなると下の骨が非常に脆くなってしまい、簡単に折れてしまいます。

今、犬や猫の平均寿命は13〜14歳程度と言われていますが、当院に来院する子達を見ると、15〜20歳くらいでも結構元気に(もちろん病気と付き合いながらであったとしても)過ごしている子がたくさんいます。13歳くらいで「口が臭いけどもうそろそろ寿命だからなぁ」と思っていたらそこからまだまだ元気に過ごせる可能性もあります。「ひどくなったらなんとかしよう」と思っていると、「ひどくなった頃には何もできない」となってしまうこともあることを知っておいてほしいのです。

 

そしてこまめなメンテナンスが良い状態を保つために必要なことを知っておいていただければと思います。

 

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