犬や猫の手術は全身麻酔になることがほとんどです。
人間のように局所麻酔をしてじゃあちょっと我慢してください・・・」という訳にはいかないのです。
例えば歯周病を治療するのも、皮膚のしこりを取るのも、場合によっては傷をきれいにして縫合するのでも全身麻酔が必要になることがあります。
全身麻酔は健康な犬・猫にとってそれほどリスクの高いものではなく、全身麻酔なしで処置をして暴れてしまったり怖い思いをさせたりするよりはずっと負担が少ないためです。
でも問題なのはその犬・猫が「本当に健康なのか」ということ。元気に見えても目に見えない病気を持っていたり、実はいろいろな症状がでているのにご家族の目に触れていないだけだったりすることも多々あります。そのため、全身麻酔を必要とする処置の場合、血液検査をしたり、一定の年齢以上では全身のレントゲン写真や超音波検査をしてから処置をさせていただくようにしています。
手術が終わった途端に違う病気が見つかったり、手術の後むしろ調子が悪くなったりというのは避けたいですし、なんのために手術をしたのかわからなくなってしまいますからね。
眼の前の病気を治すことはもちろん大切なのですが、いちばん大切なのはその子(犬・猫)が元気で長生きできたり、痛みや苦痛から逃れたりできるようにしてあげること。一つの病気が治ってもそのせいで長生きできなければ意味がありませんから。
手術や処置の前に「検査」をするのは、そうした意味があるのです。「そんなのいらないからちゃっちゃとやっちゃって・・・」と言われることは最近はなくなりましたが、昔は時々ありました。ちゃっちゃとやっちゃった結果やる前より具合が悪くなったり、治療の目的をきちんと達しなかったり、場合によってはそのまま亡くなってしまったり・・・という話も聞きますから、当院ではそうした検査をお受けいただけない場合は手術をお断りしています(緊急事態でそんなこと言ってられない・・・という状況の場合もありますが、それは「やらなければ死んでしまう」ような場合に限られ、手術後のことはまず今の処置が無事に済んでから考えましょう・・・という場合だけです)。
みなさんが一般的に「麻酔は避けたいなぁ」とお考えの通り、私達もなんでもむやみに麻酔を使いたいと思っているわけではありません。現状で麻酔を使った処置をした場合としない場合と、どちらがその子の将来にメリットが有るかを考え、本当に必要と考えられた場合にご提案させていただきます。
手術が終わった途端に「こっちも手術が必要です」「手術は成功しましたがこっちの問題で体調が悪いです」となってほしくはないですよね。きちんと全身の評価をしてから全身麻酔をするようにしてあげてくださいね。