雄の精巣は生後数ヶ月の間にお腹の中から陰嚢の中へ移動します。精巣が陰嚢におさまり、体からちょっと離れた位置にあることで体温よりやや冷やされ、通常の精巣の機能を果たすことができます。
この、お腹の中から陰嚢までの精巣の移動がうまくいかず、途中で止まってしまうのが「陰睾」。
お腹の中にあって触ることもできないのが「腹腔内陰睾」、お腹からは出たけど陰嚢に入るまで行かなかったのが「皮下陰睾」。どちらにしても陰睾は将来的に精巣が腫瘍化するリスクが高く、また遺伝する可能性が高いため、できるだけ早い時期に去勢手術をお勧めしています。
精巣の腫瘍は精巣が腫れて大きくなったり、固くごつごつして来たりすることで判断ができます。
きちんと2つの精巣が陰嚢に降りている場合にはほぼ左右対称なので、触るとある程度すぐに気づくことができます。片方(または両方)が皮下にある場合、注意して普段から触っていると大きくなったことに気づきやすいでしょう。しかし注意していないと長毛の犬では大きくなるまで気づかない・・・ということもあるかもしれないですから気を付けて上げてください。
陰睾の中で一番厄介なのは腹腔内陰睾。まず大きくなっているかどうかが分からない・・・分かるほどといったらお腹がパンパンになってしまってから・・・ということもあり、注意が必要です。手術も通常の去勢手術とは違って開腹手術になり、精巣が小さい場合は探す必要があります。幸い私が診た中にはまだありませんが、探したけどお腹の中にあるはずの精巣が見つからない・・・ということもあるようです。
精巣腫瘍は「なってから手術をすればいい」というものではありません。致命的な貧血などの症状が出てしまうと手術をしても治せない場合があります。犬や猫の寿命が伸びている今、加齢とともに増えるこうした病気の中でも「未然に確実に防ぐことができる」数少ない病気の一つです。健康なうちに対策を立てておきましょう。