避妊去勢にはもう遅いですか?と聞かれることがあります。犬や猫で言う老年期に当たる7〜8歳を過ぎた頃から、避妊去勢をしていないデメリットである生殖器疾患が増えます。検診の際にそうした病気の早期発見、なってしまった場合の症状や注意事項についてお話をする機会が増えます。
そういった時に冒頭の質問を受けることがあります。
麻酔や手術には、年齢もある程度関係しますが、それよりはその子その子の体の状態が1番大切です。若くても健康状態に問題があればリスクが高いですし、ある程度高齢でも全く問題がなければ麻酔が危険と言う事はありません。一番リスクが高いのは病気になって具合が悪い時にしなければならなくなったときです。
生殖器疾患のリスクは歳とともに高くなっていきます。そして生殖器疾患の多くは実際になってしまうと全身麻酔した上での外科手術が必要になることが多いです。という事は、冒頭の質問をされた時よりも確実に高齢になって体調の悪いときに麻酔や手術をしなければいけなくなると言うことです。
若い頃の方が一般的にはまだ病気になっている可能性が低く、手術をするにしても麻酔をするにしてもリスクが低いのは確かです。その頃にしなかった手術を高齢になってからすると言う事は、何らかの病気を抱えていたり、加齢による新陳代謝の低下など若い頃よりはリスクが増えている可能性があります。ただ、数年後に病気になったときに手術をしなければならなくなれば、より高齢になり、より何か疾患を抱えている可能性があり、なおかつ生殖器疾患により体調が悪化しているときに手術をしなければならないと言うことになるため、そのリスクは現時点で健康に近い状態で手術をするよりもかなりハイリスクになるのは間違いありません。
もちろん一生病気にならずに手術をしないで済む可能性もありますが、それはわかりません。私たちにできるのは、少しでも安全な時に少しでも安全な処置でできるだけ病気を回避して元気で長生きするための方法をご提案することです。
どうしようかなぁと思って高齢期に差し掛かって結局病気になってしまい命を落とす、というような犬や猫が少しでも減ることを願っています。