犬や猫が健康に暮らすために、「先制獣医療」という考え方をもとに、「病気にならないように」注意することで様々な病気を防ぐことができると考えて、健康診断や「元気で健康そうに見える」ときの早期の病気発見/治療に力を入れています。
その中でも重要視しているのは「口腔内衛生」。
ヒトでは、口腔内を健康に保っておくことで、「健康寿命」を伸ばしたり、「生涯にかかる保険料」をへらすことができる事がわかっています。
また、犬でも人と同様に、歯周病が原因となって腎臓病、心臓病、敗血症、肺炎などを引き起こすことがわかっています。「ポルフィロモナス・グラエ」という歯周病を引き起こす悪玉菌によって心臓病のリスクが高くなるという報告もあります。
実際先日も、歯周病が原因と考えられる敗血症の19歳のヨーキーがいましたし、下顎骨骨折により食事が取れなくなってしまった16歳のダックスフントもいました。歯周病は口の中だけの問題ではなく、全身に影響して命に関わる病気と言えます。
更に細菌では、「3歳以上の犬の80%が歯周病になっている」「犬を飼っている家族の16%が、犬の歯周病菌を持っている」と言われています。犬の口腔内衛生を守ることが、家族の健康を守ることにもつながるというわけです。犬も健康になるし、家族も健康になる。逆に言えば、犬の歯周病を放置すると家族の健康を害する可能性もあるということです。
では、どのようなタイミングで歯周病の治療をすればいいのか。
原則として、犬の口の中は「臭わないのが正常」です。口を開けて(フードの匂いは別として)「臭い」と感じる場合、それはすでになにかトラブルを抱えている可能性があります。
見た目では、歯石が「付き始めた時」が歯周病の始まりです。そのまましておくと歯肉が少し赤くなり、その赤みが広がり、歯肉が後退して歯の根元が徐々に見えるようになってきて・・・となったときには、元通りに戻すことはできません。
ですから、「歯石がついてきたら」早めにきちんと全身麻酔をしてきれいにすることが大切です。歯磨きが「きちんと」できる場合で3〜5年毎、歯磨きができなければ年1回程度の処置をすると、10歳を過ぎてもきれいな葉を維持することができます。12〜3歳をすぎると何らかの理由で全身麻酔が難しい場合が出てきます(心臓病など)ので、そうなると頻繁に処置をするのが難しくなりますから、できるだけそれまでにいい状態を保っておいて、歯磨きする習慣をつけておくのがいいでしょう。
重度の歯周病の子は、病院に入ってきただけで院内がその子の口の臭いで満たされますし、診察後しばらくしても臭いが残ってしまうこともあります。消臭剤程度では簡単には消えないのですね。ご家族はずっと一緒にいると匂いに慣れてしまっているのかもしれませんが、その臭いのもとになるのが歯周病菌なのです。
きちんと歯周病の管理をして犬猫もご家族も元気で長生きするのが理想ですね。