「ビール酵母を飲ませるとダニがつかない」という噂があるようで、「犬にビール酵母を飲ませてもいいのか」という相談がありました。
人ではビール酵母を主体としたサプリメントがありますが、「消化を助ける」とか「ビタミン・ミネラルを含んでいて健康にいい」というためのもののようです。
実際に犬にビール酵母をやったらどうなるか・・・ビール酵母の成分はアミノ酸と食物繊維とビタミン・ミネラル。きちんとしたドッグフードを食べている犬ではビタミン・ミネラルが不足していることはありませんので（総合栄養食のドッグフードの栄養バランスはかなり優れているので）、特別補給の意味はありません。消化を助ける働きとしても、犬に同じような働きがあるのかどうか（そもそも本当に消化を変えるほどの働きがあったらサプリメントではなくて薬の扱いになるはずですが）についてきちんとしたデータはないようです。
もしビール酵母の摂取でダニが予防できるなら・・・マダニはすでに犬や猫では「ほぼ100％予防できる薬があるため、きちんと対策をすれば大きな脅威ではなくなってきています。それより問題なのは人間。人間に対して有効な予防薬がないうえに、SFTSやダニ媒介性脳炎は人で症状が強く出て死亡率も高い恐ろしい病気です。つまり、もしビール酵母でマダニが防げるのであれば、まずは人間が摂取するべきでしょう。
厚生労働省のHPを見てみると、人へのマダニの付着を防ぐ方法として「長袖長ズボンを着用」「いそうな場所に近づかない」といったとてもアナログな方法が推奨されています。ここでビール酵母が推奨されていないということは、少なくとも科学的データとしてビール酵母の摂取によるマダニ予防は難しいであろうと推測されます。
少なくとも犬や猫のマダニ予防には、月1回（ものによっては3ヶ月に1回）の投薬をする方が、絶対的に信頼できると思います。
