犬の寿命は獣医学の進歩とともにずいぶん長くなりました。それに伴い、人で見られる高齢期の疾患・・・がんや認知症・・・が犬にもあることがわかってきました。
当院に来院する犬や猫でも、高齢になるとともに様々な腫瘍性疾患が見られます。そしてそれと同じかそれ以上に、認知症の症状が出る子も増えてきました。
今では、高齢犬の5頭に1頭で、認知機能の低下が見られると言われています。
認知症は、犬や猫(おそらく人間も)が高齢下するにしたが、体内の抗酸化作用が低下して起こります。生きていると体内で「フリーラジカル」という酸化毒が作られます。若い頃は体内の抗酸化成分により抑えられていますが、高齢になるに従いこの機能が低下し、その結果様々な問題が生じます。それが脳神経へダメージを与えるのが認知症の一つの原因と言われています。
認知症は完治するものではないため、進行を遅らせて生活の質を落とさないようにする必要があります。そのためには以下の点に注意しておくのがいいと言われています。
1.環境整備
体の状態に合わせて、環境整備をしてあげましょう。足腰が弱くなってきたら滑り止めを引いてあげて歩きやすくすることで体の負担を減らせます。
排尿排便の問題を軽減するために行きやすい場所にトイレを増やしたり、運動することも認知機能低下に良いと言われているためゆっくりでもお散歩に行ってあげたり、知育トイを使って遊んであげたりするのもいいようです。
2.栄養学的対応
バランスよく栄養分の摂取をするのは勿論のこと、フリーラジカルは「抗酸化」作用のある物質で抑えることができると言われていますから、サプリメントなどで補うといいと言われています。様々なサプリメントがありますが、ある程度きちんとしたデータに基づいたものを使うようにしましょう。サプリメントの中には成分が少ししか入っていないようなものもありますから、きちんと選んであげてください。当院でお勧めのサプリメントもありますので、心配な時はご相談ください。
3.薬物療法
認知機能の低下が進むと、夜間に起き出したり吠えたりするようになることがあります。そうならないように普段から規則正しい生活をし、昼間にしっかり睡眠をとりすぎないようにするのがいいと言われています。一度昼夜逆転すると戻すことができなくなるためです。
それでも夜間に眠れなくなった場合、状況に合わせてお薬を使うなど、自宅で落ち着いて過ごすことができるようにしてあげるようにします。
高齢になったから仕方がないとご自宅で家族が我慢に我慢を重ねて生活をした結果、夜通し吠え続けるようになって近所から苦情が来るようになったり、人間が生活できなくなってしまって「何とかしてほしい」という相談を受けることがありますが、そこまで行ってしまうとできることはあまり多くありません。そうなる前から年齢や体の状態に合わせた対応をしておくことが、最後までご自宅で快適に過ごすためには必要です。
以下のような行動の変化が見られたら早めにご相談ください。
・トイレを失敗するようになる
・朝起きてくる時間が遅くなる
・散歩や遊びに興味がなくなる
・呼びかけに反応しない時がある
・家族が帰宅しても迎えに出てこなくなる
・夜中に起きるようになる
など