犬ではアトピー性皮膚炎を疑う子が結構たくさんいます。
そもそもアトピーは「目に見えない病気」で、よくアトピーの症状としてみられる「皮膚が赤く、痒い」というのは「アトピーが増悪した状態」です。
ひどい皮膚病の子は見た目にも痒がって、ご家族が異常に気付いて病院に連れてくる・・・ということが多くなります。
しかし、例えば健康診断で来院した子の「指の間が少し赤い」とか、「耳の中が少し赤い」段階では、ご家族が皮膚の異常に気付いていないことも多くあります。あるいは「そういえば足先を舐めていた」という程度の認識のことも結構多くみられます。
それが「アトピーなのかどうか」はみただけではわからないのですが、皮膚の状態を調べたり、少し治療したりしてみたうえでアトピーが疑われるようになると、注意が必要です。
アトピーは「皮膚が赤くなって痒くなるだけの病気」ではありません。
確かにそうした症状としてみられることが多いですが、アトピーは皮膚が赤くなくなっても「治る」わけではありません。痒みが残ることもおおく、また治療やスキンケアをやめると再発します。そして、これを繰り返しているうちに徐々に悪化し、コントロールしづらくなっていきます。
アトピーが厄介なのはこれだけではありません。
まず、アトピーは慢性進行性の全身疾患です。
アトピーは皮膚の構造異常から起こると言われていますが、常に皮膚に様々な刺激があることで、様々なアレルギー疾患を引き起こすことになります。年齢とともに様々な刺激を受け続けると、そうしたものに対してアレルギーを引き起こすようになるのです。
さらに最近ヒトでは様々な病気の元になっている可能性が示唆されています。実際にアトピー性皮膚炎があると
・うつ病の確率が上昇
・骨折リスクが10%程度上昇
・皮膚がん・腎がんになるリスクが上昇
・心房細動のリスクが1.2倍
・リンパ腫のリスクが増加し、特に湿疹の重症度が高くなるとリスクも高くなる
といったデータが報告されています。
アトピーは「皮膚の病気」ではなく、命に関わる全身疾患ともいえますね。
健康で長く一緒に過ごすためには、アトピー性皮膚炎を適切に発見し、治療してあげることが大切です。「たかが皮膚病」ではないのです。