「麻酔をするのが怖いから」という理由で、必要な処置を受けることができず、結果的に可哀想な結果になってしまう子が時々います。不必要にやるものではありませんが、その子の生涯を幸せにまっとうさせてあげるためには必要なものの一つとかんがえています。
麻酔は処置中の痛みを取ると言うことだけではなく、処置や検査をしやすくし、恐怖感を取り除き、ストレスから身を守ることがその役割です。
当院では麻酔を行う処置のうち、日帰りでできる範囲のものは月・水・金の午前中に行うことが多いです。時間のかかるものや術後の管理が必要なものは原則火曜日の午後に実施しています。
麻酔を行う際は以下の手順で行っています。
①麻酔前の全身のチェック。身体検査や必要に応じて血液検査、レントゲン検査や超音波検査、血がきちんと止まるかどうかのチェックなどは、手術日より前に事前に実施します。
②麻酔当日は、再度身体検査を行い問題がないかを確認します。
問題がないと判断した場合、お預かりをして準備を進めていきます。
・血管の確保
薬を投与したり、点滴をしたりするための管を血管につけます。主に前肢につけますので、清潔な状態にするために毛を刈らせていただきます。必要に応じて手術が始まるまで点滴をしてできるだけ体調を整えておきます。
・前投薬の投与
不安を取り除いたり、副作用を抑えるお薬を投与します。
・麻酔導入
導入薬を投与すると徐々に意識がなくなっていきます。完全に意識がなくなったところで気道に気管チューブを設置します。また生体モニターの装着を行います。
・麻酔維持
処置・手術中に安定した状態を維持するため、ガス麻酔と鎮痛剤などを組み合わせて調節します。
・覚醒
麻酔薬の投与を中止し、徐々に意識を回復させます。
③しっかり覚醒して問題がないと判断できたところで、別途状態をチェックするための部屋に移ってその後の状態のチェックに移ります。ご家族に検査結果や手術結果をご報告するのはこのタイミングになります。必要に応じてその後も点滴や鎮痛剤の投与などを継続しながら様子をモニタリングします。
使用するお薬は、手術内容(痛みの度合いや処置時間など)により適宜変わります。一番その子に適していて、負担が少なく効果が最大限に出るような選択をして実施します。
麻酔が必要な処置を、麻酔が怖いからとなしで実施するのは、逆に大きな恐怖や痛みを与えることになってしまいます。なぜその措置が必要なのか、それをしないと将来どうなるのか、そこまで考えて選択をしてあげたいですよね。
不安がある場合はご相談ください。