「無麻酔で歯石を取ります」というサービスを行なっているところがあるようです。
「無麻酔の歯石取り」にはいくつかの問題があります。当院では以下のように考えています。
①獣医師以外による処置について
医療では「歯や歯茎に直接触れて薬剤を塗布したり、歯石を除去することができるのは「歯科衛生士」のみ」と定められています。「歯科衛生士」は3年間専門機関で学んだ後国家試験に合格しなければならない国家資格です。
犬に対して同等の医療行為を行うことができるのは獣医師だけです。獣医師以外が行った場合、獣医師方や動物愛護法といった法律に違反し、刑事罰の対象となります。
近年「ドッグハイジニスト」という講習数日で得られる民間資格所有者が、「無麻酔歯石とり」を謳い文句に実施して問題になっていると聞きました。これは上記のような理由から法に触れる問題なので、関わらないほうがいいでしょう。
②歯石とりの目的について
歯石とりをする理由はいくつかあります。当院で通常歯石とりをおすすめするのは、歯周病を防ぐ・治すことが目的です。そのためには「歯肉縁下」といって歯肉の下をきれいにする必要があります。そのためには全身麻酔が絶対に必要です。
無麻酔での歯石とりは、見た目に歯石を取り除くことできれいにしたり、歯磨きをしやすくすることには役に立ちます。しかし「きれいになったから歯周病が治った」「きれいになったら歯周病予防効果がある」というものではなく、見える範囲がきれいでも歯肉縁下の歯垢や細菌によって歯周病自体は進行してしまいます。ですから無麻酔の歯石とりを行った場合、見えない部分の状況がわかりづらくなっていることを認識して、よりきちんと歯ブラシで歯磨きをするとか、定期的に全身麻酔で歯肉縁下の歯垢・歯石をするということが必要です。
「見た目がきれいになってよかった」と歯磨きをしないでいると、見えないところで歯周病が進行して取り返しがつかないことになってしまいますから、そこをよく理解しておく必要があります。