先日は保護犬のLちゃんが来院。
保護犬の多くは繁殖に使われていた子で、数回の出産や飼育環境により重度の歯周病の状態で新しい家族に迎え入れられることが多いように思います。重度な歯周病は全身に悪影響を及ぼしますし、何より口腔内の悪臭や不快感によってその子自身もご家族も苦労されることが多く、それを解消するための処置を検討することになります。
Lちゃんのご家族は以前も保護犬を迎えたことがあるのでそのあたりは納得の上で引き取られており、まずは家に慣らして、不妊手術をして、いよいよ口腔内の検査と処置にたどり着きました。
犬では人間と違い、口の中の処置となるとどうしても全身麻酔が必要です。これはおとなしいおとなしくないに関係なく、犬では合計42本もある歯が全部ちゃんとあるかどうかを目視するだけでも容易ではなく、更に裏側や歯と歯の隙間、見えない歯が埋まっているのか、折れているのか、ないのかを確認するためのレントゲン撮影なども含めて「きちんと診察」することが麻酔なしには難しいからです。
Lちゃんはまず全身麻酔の前の検査を行い、いくつかの小さな問題はあるものの安全に処置ができることを確認しました。実際の処置にあたっては全身麻酔の後口の中を調べ、末期的な状態になった歯と近い将来問題を起こしそうな歯を抜歯し、残しておく歯をきれいにしました。抜歯した本数は22本。半分以上抜きましたが、口の中の環境は良くなり今後しばらくはトラブルなく過ごすことができる状態になりました。
口のトラブルは気づいていてもついつい後回しにされてしまうことがありますが、顎の骨まで問題が起こったり、全身の臓器にも影響が出たりすることがわかっています。実際に高齢になって歯周病による口腔内細菌から誤嚥性肺炎や敗血症といった致命的な状態になってしまう子もいます。そうなってから口の中の処置をすることは難しいですし、それで解決する状態ではなくなってしまっています。
まだ比較的健康で全身麻酔を含めた処置が可能なうちに、「きちんとした(ここ重要です)」処置をしてあげておくと健康寿命を伸ばすことができます。
まずはご自宅で口の中を除いてみてください。難しければお連れいただければきちんとチェックさせていただきます(口を触ると怒る子はチェックの段階から全身麻酔が必要な場合がありますので別途ご相談ください)。