14歳のシー・ズー犬のRちゃんは当院へははじめての来院。お腹にしこりができているということでした。
Rちゃんは子供の頃から皮膚が弱く、ずっとお薬を飲んでいたということでしたので、来院する際にそのお薬をお持ちいただくようにお願いしていました。来院したRちゃんを見るとお腹の皮膚はベタベタであまり治療をしていたように見えません。それにお腹だけが妙に太く、変わった体型をしています。食欲が旺盛で、水をたくさん飲んでおしっこもたくさんする・・・というRちゃん。お腹にはたしかにしこりがあり、手術が必要なものだったのですが、それ以前に小さい頃からずっと飲んでいるというステロイド剤の悪影響が出てしまっているようでした。
昨今は皮膚病のワンちゃんが多く、いろいろな治療を受けている子が来院されます。その中でも一番困るのはステロイド剤を長期間投与しているという子。
いろいろな働きのある薬で、確かにどうしても必要な疾患や皮膚炎もあるのですが、副作用もそれなりにあるクスリで漫然と使っていいものではありません。
皮膚病の治療にはステロイド剤を使う前に食事の改善やスキンケア、生活環境の改善などといった基本があり、その上で必要に応じて各種のクスリを使って行きます。それらを放っておいてステロイドで痒みだけごまかすのはよくありません。困るのは、ステロイド剤の投与によって皮膚が一旦良くなったようにみえることで、ご家族も「このクスリがないと皮膚が悪い」と思ってどんどんステロイド剤を投与してしまうことです。
アレルギー性やアトピー性の皮膚病は、原則根治することは難しく生涯付き合っていく必要がある病気です。最低限の副作用で症状を改善させて快適に過ごすことができるようにしてあげるために、例えば何でもかんでも食べさせないようにしたり、頻繁にシャンプーしたりといった人間の我慢や手間がかかっても副作用が(ほとんど)ないようなことを地道に積み重ねてあげるのが一番いいだろうと考えます。
もちろん皮膚病以外の病気や、皮膚病でも特定の病態の時にはステロイド剤が必要だったり有効だったりする場合もあります。デメリットよりも使うメリットが上回る場合は中途半端にするのではなくきちんと使う必要がある場合もありますので、ステロイド剤を怖がりすぎる必要はありません。
それでも、「飲ませると飲水量や排尿量が多くなる」「食欲が異常に出る」といったことのあるお薬を特に皮膚のチェックや血液検査での副作用のチェックなくだらだらと飲ませるのは、百害あって一利なしです。
いざというときに困ることになりますから、「かゆみどめ」を漫然と飲んでいるときはちゃんと動物病院にご相談くださいね。