この時期になると「ピンクリボン」というキャンペーンを良く見かけます。
ピンクリボンは乳がん啓発運動。
犬や猫でも乳腺腫瘍は心配な病気の一つです。
犬や猫の乳腺は、左右の脇の下あたりから内股まで広く分布しています。乳腺腫瘍は主にこの周囲にしこりを作ります。犬では乳腺にできたしこりの50%が「乳がん」。猫ではなんと90%以上が「乳がん」。犬でも猫でも怖い病気です。
最近は様々なデータから、初回発情前の避妊手術で犬では1/20に、猫でも1/8程度に発生率を抑えることができます。初回発情の後でも、その後発情を数回繰り返す前にできるだけ早く避妊手術することで、しない場合より発生率を下げることができます。当院ではこうした理由からも可能な限り早期の避妊手術をお勧めしています。
不妊手術はしたくないという方もときどきいらっしゃいます。犬や猫が人間と一緒に暮らすというのは、犬や猫にとっては不自然な生活スタイルで、通常では考えられないくらい長生きをし、いろいろな病気のリスクを抱えています。不妊手術はそうした環境の中でストレスを減らし、病気になる可能性を減らして寿命をのばすことが統計的に分かっています。雄では去勢手術を行うと13%以上、雌では避妊手術により26%以上も寿命が伸びるそうです!(海外での7万頭以上の犬を用いた報告:Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion DogsCopyright: c 2013 Jessica M. Hoffman et al.)
残念ながら避妊手術をしたから乳がんが絶対できないというわけではありません。避妊手術していないワンちゃん・ネコちゃんはもちろん手術を終えている子でも、乳腺にしこりを見つけたらできるだけ早く切除を含めた詳しい検査を行う必要があります。乳がんであっても早期に適切な手術を行うことで根治も期待できます。そのためにはいつも体を触ってあげること。病気の発見にはご家族の愛情が必要です。
気になるしこりを見つけたら・・・あまり様子を見すぎずに病院にお連れ下さい。3ヶ月は犬や猫の1年に相当すると言われています。人間では自分に異常なしこりを見つけて何ヶ月もほうっておくということはあまり無いでしょう。その間に進行してしまうような場合もありますから、まずは適切な診断を受けることをおすすめします。