先日、人間の歯科の先生の講義を聴く機会がありました。
歯周病は、細菌が多数生息する口の中での人間と細菌の免疫のバランスが崩れて起こる病気で、様々な病気の引き金になる。「常在菌」と呼ばれる普段から口の中にいるような細菌ともともと共存しているが、そうした細菌にからだが負けて「共存できなくなる」ことが寿命を迎えるということ・・・というようなお話でした。
その中で、歯周病が様々な病気の誘引となっているということで、
- 口腔内のケアが肺炎(死因の大多数)の発症を抑える
- 手術前に歯周病治療・歯石除去をしておくと術後の肺炎リスクが1/4になる
- 歯の残る数が少ない人ほど、肺がん、胃がん、脳梗塞、糖尿病の確率が上昇する
- 歯の残りが少ない人は、20本以上残っている人より認知症になる確率が約2倍(8020運動の根拠)
- ウイルスへの抵抗力が低下し、インフルエンザを重症化したり、エイズ発症の引き金になったりする
- 歯周病患者にがんが多い。一日2回以上歯磨きをする人は、1回の人よりガンが3割少ない
といったような興味深い話を聞くことができました。
犬でも、例えば歯周病の程度と腎臓病の有無とに密接な関係があることが分かっていたりします。
歯周病は歯肉が壊れ、歯の根元や顎の骨が溶けたりする厄介な病気ですが、よほどひどくならないと痛みを訴えません。これは人間でも同じようで、歯周病の原因菌が痛みを感じにくくするように神経に影響を及ぼしているのだそうです。ですから「口がくさいけどご飯も食べているから大丈夫・・・」というのは大きな間違い。「痛くない病気」だということを知っておく必要がありますね。
人間の医療では、歯科とその他は大きく異なります。「歯医者」と「医者」は学ぶことも資格も大きく違っています。しかし犬や猫の獣医学では一緒にまとめて学び、日常の診療でも両方同時に診察をしています。口の中と全身はつながっている・・・とても大切なのだと思いました。
今回のセミナーには歯科医師も参加されていたようでしたが、歯科医師にも「口の中だけを見ている人」とそうではない人がいるようだということもわかりました^^;